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レヴュー
02.17.三村奈々恵
小坂井町

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2月17日(日)三村奈々恵 小坂井町 マリンバ&ヴィブラフォンコンサート
ピアノ:塩入俊哉
会 場:愛知県宝飯郡小坂井町フロイデンホール
開 演:14時/終演:16時すぎ

小坂井町へ向かう風景は雪景色。湿り気を含む雪が樹木をモノトーンの陰影を造形。山々は水墨画の静寂を保ち自然の無垢な美にみとれる。
ステージにはキラキラグレーとブラックのパンツスタイルの三村さんにブラックスーツの塩入さん。風景がフラッシュバックする。光沢のグレーにライトが射し静寂の水墨画が気を受けて動き始める。
無音の中に鮮やかな音の色彩が普遍的な美として自然の如く流し込まれ、オーロラの織物を色彩で織り上げていくイメージに心も熱くなっていった。 マリンバの音は会場のあらゆる角度から包み込むぬくもりと空気の振動を感じ、足元から心の深層へじわじわと響いてくる。
その音の流れは奔流になり渦巻き、のみこまれていく一体感が迫る。 オープニングはベルを鳴らす整然とした音色で始まった。
ルロイ・アンダーソン作曲のシンコペーティッド・クロック♪
目覚まし時計のベルよりお客さんを迎えて下さるベルね。集まれーっと(^^♪ベルの音が全体に響き渡り軽やかで明快。途中からジャジーに弾んで和やかな雰囲気になるの。このさりげない変化の優しさににんまり。おしまいでは沢山の祝福のベルがなり響くのでお二人での演奏のおもてなし、お出迎えが私達が主役になっちゃう祝福を受けている感覚が笑顔を招く。選曲good。軽快でありながらも早速濃密な音の掛け合いが随所に聴かれ、これぞ生デュオの演奏!至福のとき到来。
続く同じアンダーソンのタイプライター♪三村さんのバチさばきがお見事。むかーしのUSA製タイプライターの軸が打つ度に一本一本と跳ね上がるようにマレットと音が均一に跳ねる。高速で忙しい忙しい(音は落ち着いています)まさにタイプライターね。塩入さんのピアノは時々反応音を入れ、交錯がご愛嬌。楽しく晴れやかな気分に最初から縦横無尽にマリンバを操る三村さんの技と音色はさすが世界No.1!と期待が高まる。
さぁ大好きなクラシック編(アンダーソンもクラシックです)ドビュッシーのDr.グラドゥス・アド・パルナッスム♪
前半はマリンバの独奏。すごい。一台からと思えない奥深く活き活きとした余韻の響きまでもが流麗に響き渡る。うねりを興しながらも均一に揃ったさざ波がつぎつぎに押し寄せてくる。途中から(と思う^^;)塩入さんのピアノがおごそかに重低音の絶え間のない伴奏が入るのです。伴奏に徹していたのですが、音色がピアノじゃない。そうティンパニ!が静かに打ち鳴らしている音(いつの間にか入っていたという匙加減もニクい)。どわーっと支えている。ピアノじゃない音と聴こえた瞬間身震いが来ました。 三村さん独奏のバッハの無伴奏。チェロでCDでもコンサートでもたっくさん聴いてきましたが、マリンバで聴かれるなんてとっても幸せ。最初の一音にがっつん。ふくよかな響きが肌に微動として伝わる。丁寧に均一に奏でられる音の輪が幾重にもひろがり、円やかな残音とくっきり軽い音の輪郭が鳴る新たなる魅力、別の神聖な曲じゃないかしらと聴こえてすごく良かったです。確かラストのトレモロが細かくてほんとに綺麗でした。
初めはひまわり♪と聴き違えたピアソラの曲、題名忘れました。アレンジがとっても凝っていて起伏と緩急が豊かな部分にピアソラの秘めた情熱を聴く。ピアノが旋律を飄々と語る音が主でそこへマリンバが低音で重鎮な表情を載せていく展開は侘びと寂の感をオシャレに磨いている。都会内省的ムーディな世界。デュオ感たっぷりで嬉しい。
一部のラストは、剣の舞♪です。トライアングルも混じっていそうな美しい響きがヴィヴラフォンから発せられ。超高速なのに安定感があるからむしろ気持ちが落ち着きゆったりと聴かれる。ピアノの伴奏がベースとかギターの音色も含んで疾走感あり。中間で塩入さんがピアノの蓋をコンコン叩かれての打音、皆さんと一緒に手拍手で入れたくなりますが、リズムが難しい。まず合わないわね(^^ゞ
第二部 三村さんは純白のご衣装に変身(お綺麗!!)
やったぁ。メドレーが聴かれる!三村さんが申された時は涙がでそうなくらい嬉しかった。今日は洋楽編。
ずっと超絶技巧満載の曲に圧倒されていましたので、午後のひとときティータイムです。サロンコンサートのイメージに茶葉はフォートナム&メイソンのアフタヌーンティーにしましょ。フォション程香りが強くなく上質な味わいが美味しいの。デュオなのでもちろんストレートよ!
お〜シャンゼリゼェ〜(お隣の方ハモっていました)のオープニングから青い影♪の美しいゆったりとした旋律に癒されながら〜ネスカフェの歌他色々。カーペンターズの曲が懐かしい。マリンバの音色が、カレンのアルトの声そのもの、歌詞が浮かぶの。流行っていた頃は何気なく耳にしていたけれど、今聴くと癒される声だったのねとトリルが優しく魅力を再確認できる。メドレーはマリンバとヴィブラフォンが旋律を自在に奏で、大好きな男と女♪にぞくぞく喜び(でも短い)ダイアナ♪ではピアノがギターの音色と届く。マイフェイバリットシングス♪までさらぁ〜っと爽やか。カレンダーを戻すように懐かしくもメランコリックな感情が沸き温かな紅茶にジャムが落ちた。甘酸っぱい思い出に胸がキュンとなる。
あぁ邦楽編も聴きたい。爽やかに脳裏をキュンと駆け抜けた所で世界が変わっていく。 ガナイア♪
ドイツの作曲家の作品ということですが、底知れぬ広大な大地が熱い。野生だ。
根底には中南米(かな?)の民族リズムが常に漂いマリンバ他、あらゆる打楽器、音を発する物が集まってきて自由に音を発する。木のぬくもりを聞く、もわーんと響く広い音域に主の音、マリンバが正確に刻むと聞くほど、その一本の一音が煌めき輝いていく。強烈に惹き付けられる。
塩入さんのピアノ、間奏での独奏が圧巻!打楽器達の合奏を聴いていた人々、弾いていた人たち、自然の気までもが偶発的総動員で踊りだした感。全鍵盤に指紋が残るんじゃない?ってくらいの強靭なタッチで響き渡る重低音と切れ間の無い幅広い音。音楽への純粋な情熱が一気に噴き出すよう。決して粗暴じゃなくずっしりと響く音輪なのがすごい。そしてマリンバも加わってからの世界は、妖艶な色と混沌とした狂気すらも漂いはじめ、一晩中踊り明かすエネルギーが充満していた。太鼓も大地も鳴り響く。言葉なんてぶっとんじゃいそうな南米の純真で熱いスピリットが体中突き抜け感動しました。大作!にあぁぞくぞくが止まらない。
プラーナ♪とっても好きな曲。
気品のある軽やかで優しい細やかな音の波に癒される。滑らかな所と盛り上がりのメリハリの起伏が大きく楽しめた。低音を響かせつつ高い音を輝かしく演奏する手は、マレットは何本持たれているのか解りません。数えようにも(しませんが)動きが速くて、滑る跳ねるがスゴいのです。
第二部のラストはリベルタンゴ♪!マリンバ編。
塩入さんのピアノは待っておりましたとばかりに跳びまくり。エネルギー有り余っているんじゃないかしらって思うほど、やんちゃ坊主のように動きまわる。ピアノが小気味よくノレばマリンバでぐっと重低音の響きを添えたり、ヴィブラフォンで旋律を軽やかに奏で使い分けての多彩な演奏は昂揚感をアップ。
色々な楽器でのリベルタンゴを楽しめる。アレンジと表現は楽器によって違っていく楽曲の味。堪能しました。拍手がみなさん一気に弾け、ブラヴォーです! 演奏を終えて「息がきれませんねぇ」と笑顔の三村さん。コロンビアの演奏で心臓が強くなられたのでしょうか(^ー^* )
音とマレットの動きに集中していた私は、三村さんの演奏スタイルの動きは小さいと思った。そこが好き。パフォーマンスが大きい演奏家は好みではありません(コンダクターは別(*^-^)ゞ)パフォーマンスが大きくなる事が感情の流れと申せばそうでしょうが。自分の感情が動けば同時にパフォーマンスも一致しています。音が決まった時の躍動と、ムダのない軽やかな三村さんの演奏スタイルが好きです。
幸せ、私はこんなに沢山の楽器の音色、しかも一流の皆さんの演奏で聴かれる。
アンコールでは三村さんの新曲を塩入さんとでピアノ連弾にてご披露。意表をつかれました。連弾素敵ね。
優雅に柔らかな明るいシンコペーションがDNAの螺旋階段模様を描いていくわ。幸せがいつまでも繋がりますように…と思っていた。出来上がりはどんな感じになるのでしょう。聴きたいわ。
塩入さんは黒のスーツ、三村さんは白のご衣装。曲の意味がハッピーという紹介から、パーティ…(ピアノは黒でしたが)などでご披露なされるお姿とも見えてしまった、えへへ(*^-^)ゞ
PAを通さない生の音で三村さんの柔らかな作品での長大なクレッシェンドのど迫力も直に伝わるすごさ。更には指揮者がいるかのように、曲の途中でフッと切れ、一気に切り込む間合いのタイミングがピタリと合う。音は劇的に決まりますが、その流れがとてもすっきりとしていて自然な音の流れを創っていると思いました。私達の呼吸とも合っている感覚です。どんなにppの音で終わっても余韻までデリケートな綺麗さで届き拍手のタイミングは逃してしまいました。すみませんm(_ _)m
マリンバは鍵盤を叩きますし、音域も広そうですので見た目もピアノに似てる?そのどことなく同じ雰囲気の楽器がデュエットすると、同類となる醍醐味と、マリンバが伴奏を取ると、マリンバが他の打楽器、弦楽器、とかハープの音色等に聴こえて。またマリンバがメロディを奏でればピアノの伴奏が、打楽器とか弦楽器、金管楽器の音に聴こえてくる感覚、小編成のオケを聴いている楽曲が生まれていた。これってすごい世界だと思う。 音色を操るアレンジの技もあると思う。
緊張感ある楽曲での糸が切れる事無い精神力と卓越したテクニック、重量感ある演奏と、繊細に響かせデュオの呼吸感、リズムの良さ、流麗でダイナミックな旋律美の応酬は大満足。 デュオの演奏を満喫しつつ感じた塩入さんの今日の音色は自由奔放。
情感溢れ精彩な演奏があらゆる表情へと姿を映しメロディ或は伴奏で謳われるのですっかり翻弄されクラクラ。
楽曲中どこの音域、箇所を捉えて弾いてゆくのか、情感の強弱も予測がつかない展開。楽曲全体を優れたテクニックで堅固に纏めているのに掴めない音のスリリングさが優等生じゃない。そこが魅力なのね。離れられない(*^-^)ゞ…果たしていつまで
幻想的に惹き付け優しさで包み癒すれば、すっきりと無機質に引き=弾き、大胆なアタックで少年のような純粋な強い攻めの行き先にひやひや(演奏技術ではない)。繊細にフレージングを奏でるジェントルマン的な品位。リベルタンゴのやんちゃ坊主、そしてピアソラの曲では緩慢から踵を返すプレイボーイ!?多彩な面を表現し聴く私達の感情を揺さぶり続け翻弄させる。
でも 奔放と書きましたが決して奔放ではない。
基礎に曲への深い思考を重ねたアカデミックな分析があると想う。ふまえて緻密に組まれた曲想を優等生に収まりきらない素敵なセンスと創意工夫で構築していると。荘厳な格式と自由の調和。
だからこそ自信溢れる確かな音と曲想で自在に演奏出来るの。
素敵な曲を追究し、あらゆる角度から広がりゆく可能性を秘めた音の存在ゆえの感動をいっぱい聴かせて欲しいと強く願う。

終演は午後4時すぎ。帰路、山々には未だ雪が残っていた。夕日に照らされ眩しい。おめめがしょぼしょぼしてきて涙が。
ううん、眩しさは音楽の美を流し込まれた水墨画の輝きとなり、コンサートの余韻の響きがじわーっと沁みて来て温かな涙に変わっていました。
素敵な素敵なコンサートをありがとうございました。
02.22.記

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